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不妊治療の保険適用化について

2022年4月よりこれまで自費診療であった人工授精・体外受精が保険適用となります。
体外受精の保険適用は年齢と回数に制限がありますが、3割負担で済むようになります。
人工授精に年齢制限、回数制限はございません。
当院では、保険適用となる方には保険適用内での治療を行い、できるだけ患者様の負担の少なく、安心して治療を受けていただけるようにいたします。
しかし薬や治療によっては保険ではできないものもあること、まだ不確定な内容もあり今後変更になる可能性もあることをご了承ください。

体外受精・顕微授精をお考えの方へ

卵管が閉塞している場合や抗精子抗体がある場合は体外受精、精子が極端に少ない場合や受精障害がある場合は顕微授精が適応となります。
しかし、不妊でお悩みの方の多くは、検査ではどこも悪くないのに、何度人工授精 (AIH)をしてもなかなか妊娠に至らない原因不明不妊です。一般的に、人工授精を6回程度行っても妊娠しない場合は、体外受精へのステップアップを考えます。
年齢や治療歴によっては、早めにステップアップした方がよい場合もありますので、気になる方は一度医師にご相談ください。
また、体外受精の流れや妊娠率、費用などを説明した動画のQRコードを当院のフロントにて配布しています。ご希望の方は、フロントにてお声がけください。

体外受精・顕微授精・凍結融解胚移植の流れ

卵巣刺激

通常の月経 (自然周期)では、左右どちらかの卵巣で1個の卵胞 (卵子が入った袋) が大きくなっていき、月経14日前後で袋が破れて1個の卵子が排卵されます。一方、体外受精では複数の卵子を得るために、排卵誘発剤を使用して複数の卵胞を発育させます。これを卵巣刺激といい、当院では主に下記の方法を行っています。どの方法を行うかは、患者様のご希望を伺いつつ、ご年齢やホルモン値、治療歴に応じて決めていきます。

クロミフェン
(+ hMG)法
月経3日目からクロミフェンを5日間内服していただきます。卵胞発育の状態によっては、hMGの注射を数回追加する場合があります。卵胞が約18mmまで発育したら、卵子の成熟を促すhCGの注射を行います。
GnRHアゴニスト
ショート法
月経3日目以内に点鼻薬 (GnRHアゴニスト)を開始します。点鼻薬には、卵胞発育効果および発育した卵胞の排卵抑制効果があります。hMGの注射を月経3日目頃より開始し、経腟超音波で卵胞発育の状態を確認しながら連日注射を行います。卵胞が約18mmまで発育したら点鼻薬の使用を中止し、卵子の成熟を促すhCGの注射を行います。
GnRHアンタゴニスト法
月経3日目頃よりhMGの注射を開始し、経腟超音波で卵胞発育の状態を確認しながら連日注射を行います。卵胞が約14mmを越えた時点で、ガニレスト (GnRHアンタゴニスト)の注射を併用します。ガニレストには、発育した卵胞の排卵抑制効果があります。卵胞が約18mmまで発育したらガニレストの注射を中止し、卵子の成熟を促すhCGの注射を行います。
PPOS法
(Progestin Primed Ovarian Stimulation)
月経3日目以内に黄体ホルモン剤を飲み始めます。黄体ホルモンには発育した卵胞の排卵抑制効果があります。hMGの注射を月経3日目頃黄体より開始し、経腟超音 波で卵胞発育の状態を確認しながら連日注射を行います。卵胞が約18mmまで発育したら黄体ホルモン剤を中止し、卵子の成熟を促すhCGの注射を行います。この方 法で卵巣刺激を行った場合は新鮮胚移植はできません。

採卵

卵子の成熟を促すhCGの注射を打ってから35時間後に採卵を行います。超音波プローブにつけた長い針で卵胞を穿刺し、卵子を採取します。採卵個数が少ない場合は無麻酔で、複数個採卵する場合は静脈麻酔を使用します。
ご主人には、採卵当日に自宅で採精し検体を持参頂くか、当院の採精室で採精して頂きます。ご主人の予定が合わない場合は、採卵前日までに精子を凍結保存しておくことも可能です。

受精

採卵した卵子は、体外受精または顕微授精によって受精させます。複数個採卵できた場合は、体外受精と顕微授精を半分ずつ行うことも可能です。

体外受精
運動性の良い精子を一定濃度に調整し、シャーレ内で卵子と出会わせます。
顕微授精
運動性と形態がよい精子を顕微鏡下で選び、細いガラス管で卵子に注入し受精させます。

培養

採卵翌日に受精判定を行います。受精した胚は専用の培養液で、体内と似た環境にて大切に培養します。受精後は最大6日間培養を行い、その間に胚移植や凍結保存を行います。どの段階で胚移植や凍結保存を行うかは、患者様のご希望を伺いつつ、ご年齢や治療歴、胚の状態によって決めていきます。

胚移植

胚を細いチューブに入れ、子宮の中に戻します。胚移植では麻酔は使用しません。
移植胚の個数については、日本産婦人科学会の見解で『移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する』とあるため、当院でも1個または2個とさせて頂いております。
なお、胚移植時にアシステッドハッチング(AHA:胚の周りにある透明帯と呼ばれる柔らかい膜を、人工的に薄くしたり穴をあけたりして、胚が着床しやすい状態にします)を行い、またヒアルロン酸含有培養液を使用することで着床しやすくします。
胚移植後は、子宮内膜を育て着床率を高めるために黄体ホルモンの補充を行います。

妊娠判定

胚移植から約2週間後に、尿および血液検査にて妊娠判定を行います。

胚凍結および融解胚移植

採卵後、移植胚以外に良好胚がある場合は、胚を凍結保存します。
これにより妊娠のチャンスを増やすことができ、二人目以降の妊娠希望時に融解して移植することもできます。また、採卵後に卵巣が腫れている場合や子宮内膜が薄い場合は、胚移植に適さないため、移植をキャンセルし、一旦全ての胚を凍結保存します。胚は凍結保護剤で処理し、-196℃の液体窒素内で保存します。
次の月経周期で凍結胚を融解し移植します。当院では「ホルモン補充周期」で融解胚移植を行っています。月経2日目から子宮内膜を厚くするために卵胞ホルモン剤を使用します。
子宮内膜が充分厚くなったところで、黄体ホルモン剤を開始します。凍結している胚が受精後3日目の胚であった場合は、黄体ホルモン剤投与開始から3日目に胚を融解し、移植します。

着床不全の方へおすすめする検査・治療

良好胚を繰り返し移植してもなかなか妊娠に至らない場合、子宮内環境の異常が着床(受精卵、胚が子宮内膜と接着すること)を妨げている可能性があります。
検査により異常が認められた場合には適切な治療を行うことで、着床しやすくなると考えられています。

Th1/Th2検査
血液検査で、細胞性免疫(Th1)と液性免疫(Th2)のバランスを調べます。細胞性免疫が強いと胚移植した受精卵を異物として攻撃してしまっている可能性が考えられるので、胚移植周期に拒絶反応を抑える薬を服用します。
料金
30,400円 (税込)
子宮内フローラ検査
腸内と同じく、子宮内にも善玉菌が存在します。この子宮内フローラが乱れ雑菌が増えると、子宮内膜で免疫が活性化し、受精卵を異物として攻撃してしまう可能性があります。子宮内フローラ検査によって子宮内にどのような細菌および善玉菌がいるかを調べ、雑菌が多い場合は抗菌薬、善玉菌が少ない場合はラクトフェリンの摂取や乳酸菌膣剤で子宮内の乳酸菌を増やすことをお勧めしています。
料金
1回目 49,500円(税込)
2回目 33,000円(税込)
ERA(子宮内膜着床能検査)
胚移植をする時期の子宮内膜組織を採取し、その遺伝子発現を調べることで、子宮内膜が着床にいちばん適している時期を判定する検査です。
同時に子宮内膜細菌検査(EMMA)、感染性慢性子宮内膜炎検査(ALICE)を行うこともできます。
料金
ERAのみ 135,000円 (税込) [再検査の場合 76,000円 (税込)]
ERA・EMA・ALICE 168,000円 (税込)
EMA・ALICEのみ 69,000円 (税込)
PFC-FD療法(多血小板血漿、platelet-rich plasma療法)
患者様ご自身の血液から、血小板に含まれる成長因子を抽出して凝縮したものを、子宮内に注入する方法です。血小板由来の成長因子は、細胞の成長をうながす物質や免疫にかかわる物質を含むため、着床不全が改善される可能性があり、受精卵が着床しやすくなると考えられています。
料金
198,000円 (税込)

PGT-Aについて

胚画像

PGT-A(着床前診断)は、体外受精・顕微授精で受精し、培養した胚(受精卵)の一部(胎盤のもととなる細胞)を採取し染 色体を検査する技術で、反復流産を経験された方や着床不全の方を対象とした検査法です。しかし以下のような課題点があることから、現在当院ではPGT-Aの積極的な推奨は行っておりません。

  1. 妊娠率・出産率に関して
    PGT-Aを行うことにより胚移植後の流産率は減少するとの報告はありますが、残念ながら採卵あたりの妊娠率、最終的な出産率が上昇するわけではありません。
  2. 安全面
    細胞の一部を採取することによる胚へのダメージや出生後の児への影響などの安全性は明らかではないこと
  3. 検査精度
    • 胎盤のもととなる細胞の検査結果が、必ずしも赤ちゃんとなる細胞と一致しているとは限らないこと
    • モザイク胚(正常か異常かグレーゾーンの胚)の場合、どこまで移植可能とするか、モザイク胚から生まれた児の予後が充分調査されていない点
  4. 倫理的観点
    命の選別を行っているのではないかという倫理的問題

ただ数回の流産を繰り返している方には医学的必要性に応じ、他の医療機関と連携をとり、胚の着床前診断を検討させていただきますので、担当医にお申し付けください。

プライス

採卵・胚移植の料金について

当院では、なるべく保険の範囲内で治療ができるようご提案をさせていただきます。しかし保険適用には、年齢、回数、できる治療やお薬に制限があり、患者様によっては自費での治療となる場合があります。
サンタクルスは夙川と宝塚に分娩施設がございます。当院は妊娠から出産までをトータルに考え、不妊治療を行う際は、自費診療であってもなるべく患者様のお金の負担が少なくなるよう価格設定をしています。

料金表
保険適応の場合はこちら自費診療の場合はこちら

料金例

卵巣刺激から採卵、胚移植までの料金は、患者様によって使用する薬剤、採卵個数、受精方法、凍結本数が異なるため、たいへん個人差がございます。実際に当院で治療をされた患者様を例に、料金例を紹介していますのでご参照ください。

料金例(採卵)はこちら料金例(融解胚移植)はこちら

凍結保存更新料について

胚および精子の凍結保存期限は1年です。それ以降も保存を継続される場合は、1年ごとに更新料を頂戴しております。
胚の更新料(自費)は1本~4本3万円、5~8本6万円、9本以上9万円です(2022年4月更新分より改訂)。

ART特典

当院の体外受精・顕微授精で妊娠され、さらに当院の連携病院 (サンタクルス ザ シュクガワ、サンタクルス ザ タカラヅカ)で分娩予約された方には、うれしい特典をご用意しております。

  1. 分娩予約時に必要な3万円が無料になります!
  2. 入院のお部屋をアップグレード! スイートルーム (53万円~)の料金で、サンクチュアリルーム (61万円~)のお部屋にお泊り頂けます。

妊娠率

体外受精Q&A

体外受精をするとしたら1か月にどれくらい通院しなければなりませんか?
自分で排卵誘発剤の注射を打つ「自己注射」を選択して頂くと、通院回数は減ります。例えば、自己注射をして頂き、採卵周期で胚移植をせずに一旦すべての胚を凍結保存したとすると、1か月間の通院回数は5回程度になります。当院では採血や検査はなるべく必要最小限とし、患者様の負担を軽減するよう努めております。
妊娠率はどのくらいですか?
日本産科婦人科学会の統計によると、2015年の体外受精・顕微授精の妊娠率は、新鮮胚移植が20.8%、凍結融解胚移植が33.2%でした。凍結融解胚移植で妊娠率が高いのは、融解胚移植周期の方が子宮内膜の状態を整えやすいという理由と、凍結している胚はもともと良いグレードの胚であるという理由が考えられます。
体外受精や顕微授精をすることで、子が染色体異常や奇形になる可能性はありますか?
体外受精で生まれた子に先天異常がある割合は、自然妊娠で出産した時の割合とほぼ同じです。ただし、重度の乏精子症の精子には染色体異常が含まれている可能性があるので、顕微授精で生まれた子は少しだけ染色体異常が多くなるという報告があります。男の子が生まれた場合は、精子が少ない性質が遺伝する可能性があります。
胚は凍結保存しても問題ないのですか?
胚は凍結保護剤で処理しながら急速に凍結し、液体窒素内で保存するため、長期保存が可能で胚へのダメージはほとんどありません。また、凍結融解胚移植で生まれた子に染色体異常などの先天異常が多いとする報告はありません。